パラフィン・プロック、ガラス標本のラベルに記載される内容の標準化を目指す米国病理学会(CAP)による提案。診断部門関係者には一読をお勧めしたい論文です。
以下はアメリカ病理学会College of American Pathologists(CAP)が、病理部門で作成されるパラフィン・ブロックとスライド(ガラス標本)のラベルに記載される内容の標準化を目指して、病理専門家の意見を収集し、提案したガイドラインを紹介するものです。
1.病理部門では全てのパラフィン・ブロックとスライドが、患者を識別するための2つ識別子(同定するための情報)を用いて、明瞭に標識(ラベル)される必要がある。【推奨】
2. 病理部門では病理診断報告書および全てのパラフィン・ブロックとスライドに記載される属性が、症例の種類(組織診、細胞診、あるいは剖検)、年、固有の登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)を含むようにする必要がある。【専門家の意見】
例:S14-9999 (S=組織診 C=細胞診 A=剖検、年、登録番号)
注意:病理部門によって異なる様式で情報を配置してよい(例.14-9999S、14S-9999)。また、病院や診療科を示す文字を追加してもよい。
3. 患者名を識別子の1つとして使用する場合は、名前の様式がブロックやスライドと正確に関連づけられる必要がある。
注意:様式としては姓と名、完全な姓、または姓と名の頭文字、などが考えられるが、これらに限定するものではない。【専門家の意見】
4. 凍結切片やコンサルテーションなどの例で登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)が発番されていない場合は、パラフィン・ブロックとスライドを標識する2つの識別子のうち少なくとも1つは患者名である必要がある。【推奨】
注意:生年月日、カルテ番号、または健康保険証番号、あるいはそれ以外の識別子を追加してもよい。
5. 病理部門では(同一患者の)複数の検体が提出された場合は、それぞれの検体番号と固有の英数字を用いて、検体が入れられている各容器を標識する必要がある。それぞれの検体から作製される各パラフィン・ブロックとスライドは同じ英数字で標識されるべきである。【専門家の意見】
6. 病理部門では(同一患者・症例から採取された復数の)検体からそれぞれ作製されるパラフィン・ブロックを英数字を用いて標識する必要がある。それらは病理診断報告書の肉眼所見の中に明確に記載され(いわゆるスライド・インデックスを指す)、関連づけが可能である必要がある。【専門家の意見】
例:試料Aの場合は、ブロックは1、2、3 とラベル付けされています。
(S14-9999 A1、A2、A3。。。)
試料1の場合は、ブロックは、A、B、C とラベル付けされています。
(S14-9999-1A、1B、1C。。。)
7. 1個のパラフィン・ブロックから復数の切片が薄切された場合は、薄切した順番に番号を付記する必要がある。この番号は登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)、ブロック番号の後に付記する必要がある。【専門家の意見】
例:S14-9999-A1-1、S14-9999-A1-2、S14-9999-A1-3
注意:病理部門が複数の切片を作製する場合の正確な標識の方法を決定しておいてもよい。
8. 病理部門は組織化学、免疫組織化学染色、あるいは特殊な手技を行った場合には、スライドの登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)、ブロック番号などの後にそれがわかるように記載する必要がある(例:凍結切片の場合は FS、捺印細胞診の場合は TP、抗酸菌染色の場合は AFB、など)。所見の解釈に影響を与える可能性がある場合には、使用された組織化学染色の手技、特異抗体も含めるべきである。【専門家の意見】
例: S14-9999-A1-1 FS
S14-9999-A1-1 サイトケラチン(AE1 / AE3)
S14-9999-A1-1 AFB(チールネルゼン、FITE法など)
注意:専門家による委員会は recut (再薄切)、level (薄切のレベル条件を指定された場合)、deeper (深切り)などの表示がある場合、染色名が付記されていなくてもそれらが HE 染色であることを示しており、ラベルに付記する必要はないという見解を示している。また、コントロールのスライド、あるいは切片の扱いはこのガイドラインが目的とするところではないとしているが、病理部門ではこれらを患者の組織切片と区別するための明確かつ標準化された方法を確立しておくことが望ましいとしている。
9. 略語や規約の標準化については行わない。【推奨なし】
10. パラフィン・ブロックでは登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)は最も視認が容易な印刷項目であるべきで(大きなフォントや太字で表示すべき)、これに続いて患者名あるいはそれ以外の第2の識別子を記載する必要がある。登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)と第2の識別子が読み取ることが困難となる場合を考慮して、付加的な要素(例えば施設名、組織型、採取場所など)を付記してもよい。【専門家の意見】
11. スライドにおいても登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)は最も重要な印刷要素で(大きなフォントや太字で表示すべきである)、さらに患者名やそれ以外の第2識別子、染色名・方法を記載する必要があり。登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)と第2の識別子が読み取ることが困難となる場合を考慮して、付加的な要素(例えば施設名、組織型、採取場所など)を付記してもよい。【専門家の意見】
12. 病理部門は(外部施設)からコンサルテーションを目的として受領したパラフィン・ブロックとスライド(いわゆる持参標本)に自施設の登録番号 Accession number (いわゆる標本番号)を記載したラベルを添付するべきである。その際、オリジナルのラベルを覆い隠さないようにする必要がある。【専門家の意見】
結論
- このガイドラインは、すべてのパラフィン・ブロックとスライドが、容易かつ確実に患者と関連づけさせることを目的として標準化を行ったものである。
- 2つの患者識別子の使用に加えて、英数字記号を使用することで、検体から派生する全てのパラフィン・ブロックとスライドを識別することが可能となり、報告書の記載・解釈が容易となる。