診断 : 診断:未分化大細胞型リンパ腫(Anaplastic large cell lymphoma:ALCL)
未分化大細胞型リンパ腫anaplastic large cell lymphoma(ALCL)は、CD30陽性の大型多形細胞の増殖を特徴とするT細胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL)の一つで、その頻度は全リンパ腫の1.5%程度を占めるに過ぎず、比較的稀な腫瘍である。小児ではそれぞれNHLの1.5~3%、10~20%程度を占める。ALCL自体は若年で好発し、患者の多くは30歳未満である。発症年齢の中央値は10代後半で、男女比は3:2である。リンパ節で発生することが多いが、皮膚、骨軟部、肺、肝臓、脾臓などの節外にも発生し、縦隔、肺、肝、脾および皮膚への浸潤が予後不良因子である1)。WHO分類第4版では、ALK陽性ALCL、ALK陰性ALCL、原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患(pcALCL)の3型に分類されており、ALK 陽性例と陰性例では治療反応性・予後を含めて臨床像が異なる。
腫瘍細胞は比較的豊富な細胞質を有しているために上皮様であるのが大きな特徴で、穿刺吸引細胞診では核形不整が著明な異型細胞が多数出現し、核はときに花冠状、腎形あるいは馬蹄形を呈する。これらの細胞は診断の鍵となることからHallmark cellとよばれる。出現パターンは、孤在性に出現する場合と、異型細胞が集簇を形成してあたかも上皮性結合を示しているようにみえる場合があり、この二つのパターンがしばしば混在する。以上の形態により、細胞診のみならず組織診においても未分化癌や低分化癌の転移が常に鑑別診断として挙げられる。従って、診断の際には患者の年齢や既往歴を含む臨床情報、検査データなどを確認することが重要である。
ALCLは大型の異型細胞や2核細胞、多核細胞などが散見されるため、ホジキンリンパ腫との鑑別を要することもある。ホジキンリンパ腫ではホジキン細胞やReed-Sternberg細胞の出現に加えて、背景が成熟リンパ球や好中球・好酸球など多彩な像であるのに対し、ALCLでは背景の細胞はリンパ球のみで構成されることが多く、好酸球の出現は稀であることから、背景を詳細に観察することも診断の手がかりになることがある。
診断を確定するためには、免疫組織・細胞化学的検討(CD30や上皮系マーカー、PAX5、ALKなど)が必須である。なお、ALK陰性の場合には、ALK陰性のALCLと非特定型(NOS)の末梢性T細胞性リンパ腫との区別が曖昧であるため、診断者によって診断意見が分かれる可能性があるが、前述のHallmark cellsが認められた場合はALCLと診断されることが多い。
1)Le Deley MC. Et al: Prognostic factors in childhood anaplastic large cell lymphoma: results of a large European intergroup study. Blood 111: 1560-1566, 2008.