ムチカルミン染色
フォンタナ・マッソン染色
診断 : Pulmonary cyptococcosis, capsule-deficient
酵母型真菌であるクリプトコッカス(Cryptococcus neoformans)は空気中や土壌、食物などに分布しており、鳩などの鳥類の糞中に存在する真菌が乾燥とともに巻き上げられて経気道的に肺に感染する。犬、猫なども感染する人畜共通感染症である。健常人では肺において肉芽腫を形成するが、無症状で不顕性感染であることが多い。免疫抑制状態にある場合には全身に播種する他、髄膜炎を引き起こす日和見感染症として知られている。
組織学的には肉芽腫を構成する異物型多核巨細胞の細胞質内で多数の酵母型真菌が認められる。HE染色標本では直径が 5~10 μm 程度の透明な円形ないし類円形の構造物で、PAS染色、ムチカルミン染色によって莢膜が認識可能となる。髄液中の菌体を同定する方法として墨汁法あるいはパーカーインク法(KOH 溶液にパーカーインク社製の super quink permanent blue black ink を 10~50%の割合に加えた溶液で観察する方法)が知られている。
しかし、本症例のように莢膜を欠如している場合にはいずれの染色でも陰性となるため、ブラストミセスやヒストプラズマなどの莢膜を有しない真菌との判別が困難であることがある。その場合に有用な染色としてマッソン・フォンタナ染色が挙げられる。この染色が莢膜欠損型のクリプトコッカスの診断に有用であることは1981年に Kwon-Chung らによって報告された。この染色はメラニンなどの銀還元物質によって発色するため、デヒドロキシ、あるいはポリヒドロキシフェノールを含有する細胞壁内でメラニン類似色素を産生するクリプトコッカスは莢膜の有無にかかわらず細胞壁が陽性となる。
参考文献
Kwon-Chung KJ et al. New Special stain for histopathological diagnosis of cryptococcosis. J Clin Microbiol 13; 383-387, 1981