<解説>H15-006 頸部リンパ節(生検) 6歳、男児

リンパ球・形質細胞を含有する大型組織球(中央).核は円形かつ辺縁が平滑で、クロマチン分布は均等である.

診断 : Sinus histiocytosis with massive lymphadenopathy (Rosai-Dorfman Disease)
Sinus histiocytosis with massive lymphadenopathy(SHML)は原因不明の稀な一過性組織球疾患で、高度の両側性頸部リンパ節腫脹によって特徴づけられる。発熱と体重減少、白血球増多、ESR値上昇、高グロブリン血症を伴い、25~45%の患者では皮膚、上気道、軟部組織、眼窩、骨などのリンパ節以外の組織にも病変が生じる。20歳以下で発生することが多い。緩徐に経過することから、腫瘍性ではなく反応性の病変であると考えられており、実際にポリクローナルな増殖性変化であることが確認されている。ヒトヘルペスウイルス6型、EBウイルスなどに対するリンパ網内系の特異な反応形態の1つであるとする説もあるが、実際に病原体が検出されたとする報告はない。

組織学的にはリンパ節の洞が拡張し、大型の組織球によって充満される。リンパ球・形質細胞も併存している。進行とともにリンパ節全体にわたって変化が生じる。組織球は明瞭な核小体を伴う大型かつ円形の核と淡明な細胞質を有する。細胞質内ではリンパ球・形質細胞を含有する空胞が存在している。この現象は emperiphoresis と呼ばれるもので、SHML に特徴的であるが、特異的ではない。赤血球の貪食が認められることもある。免疫組織化学的にはこれらの組織球はS-100蛋白が陽性である他、CD4、CD11c、CD14、CD33、CD68 が陽性となる。約半数の例では CD30 も陽性である。ランゲルハンス組織球症とは異なり CD1a の陽性率は低く、約10%の例で陽性になるに過ぎない。

予後は良好で、3ヶ月~9ヶ月でリンパ節腫脹が消退し、寛解に至る。ただし、5年以上遷延する例や死亡例が報告されている。復数の領域のリンパ節に病変が存在する場合、実質臓器浸潤がある場合は再発を繰り返し、進行する傾向がある。

鑑別診断としてはランゲルハンス組織球症、非特異的な洞組織球症、血球貪食症候群、感染性肉芽腫、などが挙げられる。