<解説>H15-002 トルコ鞍部、内視鏡下経蝶形骨洞的腫瘍切除 10代、男性
診断 : Gangliocytoma mixed with prolactin-producing pituitary adenoma 
    同義語:Mixed pituitary gangliocytoma-adenoma (MGA)

 下垂体に生じる神経節細胞腫(gangliocytoma)の約7割に下垂体腺腫(pituitary adenoma)の合併がみられる。下垂体腺腫による臨床症状を呈し、切除された腫瘍の病理組織学的検索にて初めて神経節細胞腫と下垂体腺腫の合併が明らかとなる。合併する下垂体腺腫は成長ホルモン(GH)産生腺腫が圧倒的に多く、本症例のようにプロラクチン産生下垂体腺腫の合併は非常に稀である。本腫瘍の発症機序には諸説あり、(1)2つの腫瘍がたまたま合併した、(2)神経節細胞腫が下垂体刺激ホルモンを分泌して下垂体腺腫が生じた、(3)下垂体腺腫細胞が神経細胞に分化した、(4)下垂体に存在するstem/progenitor cellを共通の起源として2つの腫瘍が生じた、など諸説あるが現在では(4)が有力である。
 組織学的には類円形〜楕円形の核を有する細胞質の乏しい下垂体腺腫細胞が密に増殖する部分と、弱好酸性・繊維状の間質を背景に、核小体の明瞭な大型の核を有する成熟した神経細胞がまばらに増殖する部分が島状にみられる。両腫瘍成分の境界が比較的明瞭な部分と、境界が不明瞭で両腫瘍の中間的な形態をとる腫瘍細胞がみられる部分もある。免疫組織化学では下垂体腺腫細胞はsynaptophysinやprolactinが陽性で、neuNは陰性である。神経細胞はsynaptophysinやneuNが陽性である。少数ながらprolactin陽性の神経細胞もみられる。