<解説>H19-001 左前頭葉腫瘤 30代、女性


診断 :
 組織学的には、円形ないし類円形の核と淡明な細胞質を有する細胞が繊細な線維血管性の間質、微小石灰化を伴いながらびまん性に浸潤・増殖していた。これらの細胞は主として充実性シート状に増殖しており、微小血管増殖が所々で認められた(図2)。一部ではminigemistocyteとみられる細胞のほか、軽度~中等度の核大小不同、核形不整がみられ、核分裂は強拡大(視野径 0.55 mm)10視野あたり3~4個の領域が主体であったが、一部では7~8個程度認められた。凝固壊死は確認されなかった。その他に小血管周囲で間質硝子化が目立つ領域を中心として好酸性顆粒状で屈折性を示す細胞質を有する細胞が混在していた。免疫組織化学的には増殖している細胞はOlig2陽性で、IDH R132H(変異型)陽性、p53陰性(野生型パターン)、ATRX陽性(intact)で、Ki-67 標識率は約10%であった。好酸性顆粒状細胞質を有する細胞はGFAP陽性であった(図3)。FISHを施行したところ、1p/19q共欠失が確認された。本腫瘍は以上の所見に基づき乏突起膠腫と診断した。「核分裂が6個/10HPF以上あるいは微小血管増殖がみられる」という診断基準を満たすことから、退形成性(WHO Grade-Ⅲ)であると考えられた。

興味深い所見としてこの症例では細胞質が好酸性顆粒状物で充満されてたrefractile eosinophilic granular cellsとよばれる腫瘍細胞が認められた。顆粒はGFAPが陽性で、電顕ではグリア細線維に付随する高電子密度の構造部として認められ、minature Rosenthal fiberと構造的に同じであることが知られている。オリゴデンドログリア系腫瘍の約60%にみられ、退形成性変化を示す腫瘍に高頻度に出現する傾向がある1。

1. Yoshida T, Nakazato Y. Characterization of refractile eosinophilic granular cells in oligodendroglial tumors. Acta Neuropathol 2001;102:11-9.