<解説>H16-001 子宮頸部(生検) 40代、女性

クロモグラニンA


TTF-1

診断 : Small cell carcinoma (high-grade neuroendocrine carcinoma) associated with keratinizing squamous cell carcinoma
子宮頸部には肺と同様にカルチノイド、非定型的カルチノイド、小細胞癌、大細胞神経内分泌癌を含む神経内分泌腫瘍が発生するが、肺と比較して扁平上皮癌や腺癌と併存することが多い。特に小細胞癌はかつて小細胞非角化型扁平上皮癌とよばれていた通常型扁平上皮癌の亜型に類似しているため、注意を要する。また、分類上はカルチノイド,非定型的カルチノイドが存在しているが、疾患としての独立性には疑問が残されており、神経内分泌分化を示す腺癌の一表現型に過ぎず、腺癌として扱うべきであるとの考え方がある。実際、子宮頸部原発のカルチノイドと診断される腫瘍は転移・再発リスクが高く、予後不良であることが知られている。

形態的には小細胞癌は核クロマチンが増量した N/C 比の高い異型細胞の充実性シート状増殖で構成される。核の内部構造は不明瞭だが、クロマチン構造は繊細な顆粒状である。隣同士の核が接しており、相互に圧排している像が随所で認められる(nuclear molding)。腫瘍細胞は壊死や挫滅によって容易に崩壊し、好塩基性の核酸が流出する(DNA streaming)。また、これらが血管壁に付着すると HE 染色標本であるにもかかわらず、一見弾性線維染色を施した標本にみえる(Azzopardi 効果)。免疫組織化学的にはサイトケラチンの他、クロモグラニン、シナプトファジン、CD56 が陽性となる。クロモグラニン、シナプトファジンは細胞質がびまん性に陽性となるが、一部の細胞胃で点状に陽性となることもあるため、これを陰性と判断しないよう注意を払う必要がある。肺原発の小細胞癌、腺癌で陽性となる TTF-1 は子宮頸部の小細胞癌でも陽性となるため、TTF-1 陽性所見をもって転移であると判断することはできない。