<解説>H15-008 膀胱腫瘤(経尿道的切除) 50代、男性

サイトケラチン(CAM5.2)(免疫組織化学染色)


ALK(免疫組織化学染色)

診断 : Inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)
炎症性筋線維芽細胞腫瘍 inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)は粘液基質に富んだ間質を背景として増殖する紡錘形細胞の増殖で構成される病変で、種々の程度のリンパ球浸潤を伴う。比較的若年に発生し(9~40歳)、女性で多い傾向がある。初発症状は血尿であることが多い。膀胱刺激症状、尿閉、腹痛のほか、発熱、体重減少がみられることがある。

肉眼的には膀胱においてポリープ様隆起を形成したり、粘膜下腫瘍として認められる。腫瘍径は数 cm であることが多いが、10 cm に達することもある。表面では潰瘍を伴うこともある。組織学的には好酸性細胞質を有する長紡錘形細胞が浮腫状あるいは粘液基質に富んだ疎な間質を背景として増殖している。核は種々の程度の腫大を示し、明瞭な核小体を有する不整形の核を有する細胞が混在することもある。核分裂は 10~20個/HPF程度認められるが、核小体が殆どみられない例もある。リンパ球・形質細胞浸潤が随所で認められる。ときに好中球、好酸球の浸潤集簇もみられる。結節性筋膜炎、線維性組織球腫、デスモイド腫瘍に類似した組織パターンがみられることもある。免疫組織化学的には腫瘍細胞はα平滑筋アクチンのほか、サイトケラチンが陽性となる。ミオグロビン、MyoD1、myogenin は陰性である。診断に有用なマーカーとして anaplastic lymphoma kinase(ALK1)が知られているが、約10%の症例では陰性である。ALK1 陰性の症例では再発リスクが低いことが知られている。

予後は良好で、遠隔転移をきたした例は報告されていないが、局所再発をきたすことがある。