<解説>C15-006 胸水、80代、女性
診断 : エクリン汗孔癌(Eccrine porocarcinoma) (皮膚原発)
エクリン汗孔癌は稀な悪性皮膚付属器腫瘍で、エクリン汗孔腫の悪性化によって発生するもの(2次性)と、最初から悪性腫瘍として de novo に発生するもの(1次性)がある。組織学的には基底細胞様の異型細胞のシート状増殖とともに、淡好酸性の細胞質を有するクチクラ細胞(小皮縁細胞 citucular cells)を模倣する異型細胞で構成され、導管への分化、細胞質内空胞を伴う。
 下肢の紫斑様皮疹やポリープ様隆起を形成し、ときに潰瘍を伴う。70代に好発し、男女差はない。進行は緩徐な場合が多く、治療は外科的切除を基本とする。転移を伴う進行例では放射線療法・化学療法が行われる。

 炎症細胞を背景にN/C比の比較的高い大型異型細胞が散在性に出現している。細胞質は網状で、核周囲はやや厚くライトグリーン好性である。核はおおむね類円形で、細胞の中央に位置するものが多いものの、一部に核が偏在する細胞も混在している。核クロマチンは、細顆粒状で、1~数個の明瞭な好酸性核小体が見られる。これらの細胞は一見有棘細胞に類似するが、免疫細胞化学的には核周囲のライトグリーン好性の部位に一致して腺上皮細胞で陽性となるサイトケラチン7あるいは19が陽性となる。さらに、ジアスターゼ感受性PAS反応陽性顆粒を含有しており、ギムザ染色では細胞質ない空胞がみられる。
 胸水中に異型細胞が出現しているため、肺原発腺癌や反応性ないし腫瘍性中皮細胞である可能性も考慮する必要があるが、細胞形態からは鑑別は比較的容易である。しかし、診断を確定するためには免疫組織・細胞化学的検討を行い、皮膚の原発巣と胸水中の細胞を比較することが望ましい。