教授コラム

2015年10月20日

"As is our pathology, So is our practice"

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0344033813000307
 

"As is our pathology, So is our practice"

有名な内科医である Sir William Osler の言葉で、病理学の重要性を説く際によく引用されてきました。しかし、この言葉の文脈は殆ど知られておらず、様々な意味に解釈することができます。その疑問に応える論文が Pathology Research and Practice に掲載されています。

Pathology Research and Practice
Volume 209, Issue 4, April 2013, Pages 264–265
http://www.sciencedirect.com/…/article/pii/S0344033813000307


この言葉を世に広めたのは "Surgical Pathology" という8版まで版を重ねた病理診断学の教科書を書いたことで知られる William Boyd ですが、Osler のこの言葉には続きがありました。

オリジナルの文章は

"As is our pathology, so is our practice; the pathologist thinks today, the physician does tomorrow."

となっています。

これは Osler の内科的治療に関する講演録(Br Med J 1909;185-189)に記されていたもので、前後の文章とあわせて直訳すると『合理的な治療の決定は全て疾患の原因に関する概念的枠組みによって決定される』となります。やや難しいこの文章の一部を Boyd は削除して教科書に引用し、実地臨床における病理学の重要性を強調する言葉としました。これを今日的に解釈すると以下のようになることでしょう。
 

『高度の治療は質の高い臨床検査(病理診断)に基づく病態把握が不可欠である』

2015年10月15日

【外科病理学の歴史シリーズ Vol 1.】

【外科病理学の歴史シリーズ Vol 1.】

ピエール・ポール・ブローカ Pierre Paul Broca (1824 − 1880)
ブローカはフランスの内科医・外科医でしたが、解剖学者・人類学者としても知られています。その業績はブローカ中枢(運動性言語中枢)の名称にみることができます。彼は 1866 年に若年発生と家系内の乳癌罹患者の集積を特徴とする遺伝性乳癌を初めて記載したことでも知られています。 現在は家族歴が乳癌発生のリスク要因であることが広く知られており、単一遺伝子の特異的変異によって乳癌のリスクが上昇することが明らかとなっています。その程度は遺伝子の浸透度(penetrance)、すなわち遺伝子の形質が実際に発現に至る割合によって異なります。最も危険度が高い群に属する遺伝性乳癌としては BRCA 遺伝子の胚細胞系列変異による発生する遺伝性乳癌卵巣癌 Hereditary Breast and Ovarian Cancer (BOC)の他、Li-Fraumeni 症候群(TP53遺伝子)、Peutz-Jeghers 症候群(STK11/LKB1遺伝子)、Cowden 症候群(PTEN遺伝子)があります。

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