AGC 異型腺細胞 -続き

2018年10月06日

AGC 異型腺細胞 -続き

異型腺細胞。このこの用語自体は以前から使用されてきましたが、子宮頸部細胞診においては1988年の提案されたベセスダシステム(TBS)で正式に細胞診判定用語として採用され、その基準が設定されました。その後2001年、2014年の改定を経て現在に至っています。

この用語を巡る問題は多岐にわたるのですが、ここでは子宮頸部上皮内腺癌に限定して述べます。ベセスダシステムでは、その意義が不明なものを「特定不能な異型腺細胞 Atypical glandular cells, NOS(not otherwise specified)」、「腫瘍性を疑う異型腺細胞 Atypical glandular cells, favor neoplastic」とよんでいます。前者はさらに、① 内頸部細胞、② 内膜細胞、③ (単なる)腺細胞、の3つ、後者は、① 内頸部細胞、② (単なる)腺細胞、の2つのカテゴリーに分けられます。この中で「腫瘍性を疑う異型内頸部細胞」は浸潤腺癌ではなく、上皮内腺癌を想定して判定基準が設定されています。

これまでの研究の結果から、異型内頸部細胞が検出された場合には、約50%の頻度で上皮内腺癌や浸潤腺癌、CIN3、扁平上皮癌などの高度病変であることが後に判明することがわかっています。そのため、この判定がついた場合にはコルポスコピーと生検による組織診を用いた精査が行われます。このことは半数の例では結果的に不要な検査が行われることを意味しています。こうした理由から、異型内頸部細胞は「特定不能」,「腫瘍性を疑う」の2つに分けられ、精査の結果が陰性であれば前者の場合は経過観察、後者の場合は円錐切除が考慮されます。実際、高度病変が後にみつかる頻度はそれぞれ10~20%、80~90%となっています。ところが、日本ではこの2つが分けられておらず、管理指針も定められていません。次回はその原因と派生する問題について考えてみたいと思います。
 

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